昨夜、事務所から自宅に帰る途中のこと。感じのよい男性が近寄ってきて「すみません。この近くに住んでいるものです。今晩、友人を呼んだ夕食をするのですが、ワインがないことに気づきました。もう8時でエノテカは閉まって困っています。ワイン持っていませんか?」と質問。「〇〇通りはどこ?」「タバコの火はない?」ということは頻繁にあるが、ワインとはまた珍しい。どこかレストランに買いに行く途中、ぼくを見かけて聞いたのだ。もちろん、ワインを都合よく持ち歩いてはいない。もし持っていれば、今晩、ぼくが飲む分だ。
「えっ、ワイン?残念ながら、持ってませんよ」と答えると、「そりゃあ、そうだよね」とニコリと笑いレストランのある方角に彼は去っていった。アル中の風は全くなくーもちろん、ぼく自身、アル中と他人に思われることはないと(信じている)-、この会話、まるで山のキャンプ地じゃないか、と思った。ミラノの街の真ん中での普通の会話じゃない。しかし、それはどうでもいい。ぼくはあらためて「駄目モト」精神に感心したのだ。何か困っていることがあれば、まず一番近い場所で救いを求める。その相手がどういう人間か、助けてくれる可能性が高いかどうか、こういうことは殆ど考えない。「駄目モト」だ。
よく「ミラノで道を聞かれた。どうも現地に住んでいると思われたみたい・・・」と言う日本の人達がいるが、まず、そんなことはない。誰でもいいから、近くにいる人間から情報を獲得したかっただけだ。それ以上でもそれ以下でもない。コミュニケーションの敷居が低いだけの話だ。しかし、冒頭のワインを求める質問は敷居だけでなく、「駄目モト」でチャレンジする幅が非常に広いことを語っている。
この「駄目モト」が、ビジネスの場で不利に働くこともある。「そういうことを聞く奴は、付き合うに値しない」と思われるかもしれない。とてもリスキーだ。全てがダークになる可能性がある。が、「そう、そうやってオープンに言ってくれて嬉しいよ。じゃあ、手伝ってあげよう」と、もしかしたら言ってくれるかもしれない。多分、確率からすれば、前者のほうが多く、後者のほうが少ないだろう。しかし、似たようなメンタリティであればお互い様で、心配するほどには、そのポイントに「特殊視」はしない。
とにかく「駄目モト」スピリットは、生きていくに必要な素養であると思う。ビジネスの場で「駄目モト」をグッドタイミングで発揮するに、日常生活で「駄目モト」を日々使いこなすのは、思いのほか重要なことかもしれない・・・・と昨晩、再認識した次第。
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