ちょっと意外なタイトルかもしれません。「味から語る文化」で七味オイルのことを書きましたが、実は今、七味オイル味のオリーブのテスト販売も手がけていて、近々、本格販売します。上記にリンクしたYouTubeのPRビデオをみれば分かりますが、オリーブを石で叩き割って種を出すシーンがあります。これを入れたのは、日本で「オリーブは丸いほうが美しいから、種ありがいい」という意見が複数あったからです。
これにたいして、味のローカリゼーションは積極的に行うが、南イタリアの伝統的オリーブの食べ方そのものをローカライズする必要はないだろうと考え、あえてその方法をデモで示したわけです。肝心なのは、伝統的なレシピをローカライズ(ペペロンチーノを七味に代えた)することで、形状を変えることではない、と。およそ種がないほうが味が均一に広がるし、一度口に入れたものを人前で外に出すという躊躇を排除することができます。「美味しくて食べやすい」ことを優先すべきだと考えたのです。
「種あり」の意見で気になったのは、そこに売る側の論理が潜んでいることでした。バーのカウンターで出したとき、「見栄えがよくて金がとれる」というのは、食べる側の論理ではありません。そういう論理にしたがってはいけないとも思いました。あくまでもユーザーのロジックが味方しないといけません。そして、もう一つ、伝統的な南イタリアの食べ方を知って「種なし」を主張しているとは思えないところが、ひっかかりました。
そうしているうちに、この「種あり」「種なし」には、世代ギャップが反映されていることにも気づきました。「なし」を支持するほうが「あり」より世代が若いのです。全てではないですが、傾向として「あり」に拘るほうが年齢が上ではないかという風景がおぼろげに見えてきました。このオリーブは酒のつまみとして、若い人達が多いワインバーで売ることがマーケティングのコンセプトとしてあるので、「あり」に固執するロジックに振り回されてはいけないと判断しました。
スーパーマーケットのオリーブの棚に行くと分かりますが、多くは瓶詰めで種ありが並んでいます。我々は瓶詰めをやめました。保存食的な連想を断ち切り、酒のつまみとして一晩に食べきるというスタイルの変更を促すのが大事だと考えました。よって真空パックとしました。イタリアの青空市場で量り売りで販売されるオリーブの世界のカジュアルさに近い方を選んだのです。
まだまだ詰めるべき点はあるでしょう。しかし、イタリア文化のどこを尊重し、どこを日本のユーザーにマッチさせるか、この基本を設定したうえは、できるだけそれをキープしたいと考えています。文化を維持するのは大事。しかし、それに振り回され過ぎてもいけない。その落としどころにロジックがないといけないと思います。先日、ある名の知れたシェフに「やはり、美味しくて食べやすいのが一番でしょう。だから種なしがいいと思いますよ」と言われたとき、ユーザー文化を尊重しておいて良かったと感じました。
0 件のコメント:
コメントを投稿