2009年11月4日水曜日

味から語る文化

前回、「JETROでの勉強会」で書きましたが、その後、ますます「味と文化」がぼくのなかで大きなテーマになってきました。そのあたりの動向を「さまざまなデザイン」に今日書きました。「人の舌で寿司を食うな!」というちょっと品のないタイトルです。そして、これを書いておこうと思った直接の動機は、社会学者の八幡さんとの会話です。この内容は「長期戦は思想の確立で勝つ」で記しました。思想と舌が直接リンクするかどうかは別にして、ある痕跡を頭や心に強く残すことが非常に重要であるという意味において、ぼくはデザイン以外の武器をもっと使わないといけないと思ったのです。

ぼくはデザインの分野に20年近く軸足を置いてきましたが、同時に食品の世界にも15年ほど関わってきました。それで昨年より、長野善光寺前にある七味唐辛子の老舗、八幡屋礒五郎の七味とトスカーナのエキストラヴァージンオイルのミックス(250mlの新鮮なオイルに7gの七味唐辛子)により、両方の食材の両方の文化圏へのローカリゼーションを図っています。この商材の発展系で今、七味オイル味のオリーブをテスト販売しているのですが、ここに大きな潜在性を見出してきています。

よく人に話すのですが、「日本文化が好きで寿司を食べるのではなく、ヘルシーという価値のもとに寿司を選択し、それを何度か食べるうちに寿司が好きになり、だんだんと日本文化にも興味をもつようになる」のであって、「クールジャパンという旗印のもとに寿司を食べるのではない」のです。しかし、そこで記憶された味は強いインパクトを与えることになります。

したがって、味を持ち出すことで、デザインの話だけでは到達し得ない部分にアプローチできると思います。が、デザインというテーマでアプローチすることの可能性を見切ったわけではなく、人の生活がさまざまな要素で成立している以上、こうした多様なアングルから説明していくことが大事であると再認識したのです。以前、紹介したYouTubeのビデオ(下記)ですが、この映像から語れる文化をもっと増やすつもりです。


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