2009年8月1日土曜日

バイオリン職人「ちのけん」の目標

何度もここに登場くださっているベルリン在住のバイオリン職人である茅根健さん(通称、ちのけん)から、興味深いメールをいただきましたので転載します。拙著『ヨーロッパの目 日本の目』で、ヨーロッパから学ぶのではなくヨーロッパ人と何か一緒にやるための文化理解が必要な時代になっていると書きました。その本の趣旨と同じことを茅野健さんは工房のボスから耳にしメールをくれました。

実は今日アトリエ主のAndreasから「日本人はそろそろヨーロッパで学ぶ、ということをやめないとだめだよね」と言われてびっくりしました。まさか安西さんと同じセリフをドイツでしかも自分の勤め先で聞くとは想像もしていなかったから。

彼曰く、学ぶということもはじめは必要だけれども、いつまでそのままじゃいけない。ヨーロッパのどこそこで学んだ、ヨーロッパの誰のもとで働い た、とかそういったことは重要じゃないと。大切なのは自分。つまり、ヨーロッパでヨーロッパ人と同じ土俵に上がってちのけんなら「ちのけん」の名前で勝負 しないといけないぞ、と。今はまだ始まったばかりだから学ぶことも必要だけれども、ゆくゆくはそれが必要だと。いつかはヨーロッパの人間が「ちのけん」の ところに学びに、働きに来るように頑張れと言われました。

楽器職人の世界ではいまだにヨーロッパ信仰・アメリカ信仰が強いです。日本の外で学ぶことがありがたいと。確かに、ヨーロッパにはたくさんの日本人の楽器職人の卵がいますし、現に自分のようにどこかの工房に所属して働いている人間もいます。楽器の製作コンクールでも日本人の名前が上位に食い込むこ とももはや珍しくなくなってきました。それでも、日本人の誰それのもとで勉強、労働をしたいというヨーロッパ人はいない。なぜか?前述のAndreas曰 く「それは、日本人がヨーロッパで学ぶということをいまだに続けているからなんだよ」と。

日本人の楽器職人は決してレベルは低くないし、ほかの工房で働く日本人のうわさを聞いても、ポジティブな意見ばかりで、中には「良い工房には必ず 日本人がいる。」という人もいるくらいです。でも、まだ同じ土俵に立って自分に何ができるかという考えのもと戦っている日本人は少ない。というか、まずい ないのではないか?

自分が今勤めている工房はヨーロッパやアメリカのほかの工房と比べてもかなりレベルの高い部類に入ります。でも、そこで働いたことや学んだことよりも、そこに行けば、あの「ちのけん」がいると言われるような存在になれるように頑張ろうと目標を立てました。

事あるごとに、このAndreasは今回のようなことを言ってくれて、そのたびに目が覚める思いです。

大したことではないですが、メールさせてもらいました。

それでは。よいバカンスを。

0 件のコメント:

コメントを投稿