2009年11月15日日曜日

結構売れているヨーロッパ史の本

ジャック・ル・ゴフの『子どもたちに語るヨーロッパ史』について、「さまざまなデザイン」に書いたのですが、アマゾンでの売り上げランクをみてちょっと驚きました。一回目見たときは200番台、二回目で3000番台でした。今年の9月に発売されたヨーロッパ関係の本としては意外です。塩野七生のイタリア関係を別にすれば、最近、売れないと言われるヨーロッパの本も売れるものは売れるのか、と。それも、特に前半の通史で目新しいところはありません。中世への切り込みに新鮮さを感じたとすれば、それはアナール学派ならではの日常世界の心性で引っ張ったとしか考えれません。

また、随分と重版が続いている松岡正剛『17歳のための世界と日本の見方』と同じように、実は大人を対象としながらも子供がメインの相手であるかのように装う方法が、敷居の下げ方の定番としていいのかとも思います。とするならば、敷居さえ下げれば関心がひけるということは、ヨーロッパの心理的距離感の問題ーヨーロッパは面倒で遠いーは、実につまらないところで躓いていると言えまいか、ということになります。いや、塩野本はそこまで敷居を下げているわけではないですから、これは一体何が障害なのだろうと疑問を呈さざるを得ません。

それなりのマーケットはあるということなのでしょう。日本の工芸品が売れ、パリにブランドの洋服を買いにくるより、日本国内の温泉にでかける方がまったりとできてよいーパリでブランド品を買い捲っていた、あの林真理子でさえーという傾向が強くあったとしても、イタリアオペラや北欧デザインである程度の人が集まるように、一定の層は相変わらずヨーロッパに目が向いています。問題は、この関心の活かし方ではないか?と考えます。あるいはコアグループの力の集結度なのかもしれません。

かつてのようにヨーロッパに関心を集中させるべきというのではなく、文化多元化の現況においての分散化は決して悪いわけではありません。考えるべきなのは、分散化への認識とヨーロッパの影響力の適正評価ではないかと思います。

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