2009年7月4日土曜日

スイスを中心としたゾーニング




先月、日本で買ってきた本を何冊も並行して読んでいます。それらの多くは、ヨーロッパに関する内容で、日本でヨーロッパが一般の人たちに向けてどう語られているのかを知る目的です。知識として勉強になることは多いのですが、正直言って、あまり面白い「見方」「視点」に出会えません。ヨーロッパ近代批判は底が見えていることが多いし、その証拠に現在のリアリティにあまり触れていません。また経済、政治、歴史、これらの専門家が書くと、どうしても社会の底に流れる層が視野に入りにくく、専門家にあえてお越し願うなら、文化人類学や社会学の系統の人間ではないかとの思いが強くあります。

触れているにしても、「フィナンシル・タイムズ」「エコノミスト」「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」あたりからの引用が多く、アングロ・サクソン系です。「アングロ・サクソン系の英国人でさえ、このように米国とヨーロッパに線を引くのだ」という注釈をつけたりはするのですが、ヨーロッパ域内同士の心理的距離感が描けていないのです。

やはり、米国症候群の一例として、ぼくの目には映ります。日本におけるアメリカの存在があまりに絶大過ぎ、その全面的賛辞でないとすると、ヨーロッパを「もうひとつの選択肢」として扱うわけです。したがって、選択肢としての有利な部分をまた実像以上に強調するという「突っ走り」が目立ちます。

こんなことを、昨日、八幡さんと電話で長話していたとき、スカンジナビアモデルが日本でよく引き合いに出されるのは、他諸国より歴史が浅いとみられ、したがってモデル移植が容易ではないかと勘違いするからだと指摘されました。実は、最近、ぼくがスカンジナビア地域を話題に多く出すのは、南欧に住むぼくが「対比としてのスカンジナビア」を考えているからですが、ぼくが「日本でヨーロッパを分かりにくくしているのは、フランスの存在が大きくないですか?フランスの北と南の違いを覆い尽くすフランスの存在感が強すぎる・・・」というと、八幡さんはアルプスを中心としたゾーニングの考え方を示してくれました。

南フランス、スイス、北イタリア、オーストリア、南ドイツ、バルカン諸国の一部、これらを帯状の共通文化ゾーンとしてみるわけで、このゾーンのもうひとつが、オランダ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、北ドイツあたりとなります。この二つのゾーンをメインにしたヨーロッパ理解というのは、現在の「英国と大陸」「英国、フランス、ドイツ」「スカンジナビア」「地中海」というそれぞれの地域を中心とした見方より、よほど実際的ではないかというわけです。また、今年2月、経済連携協定に調印したスイスに焦点をおいたヨーロッパ理解が新しい視座を提供してくれるのではないかと話し合っており(八幡さんは、スイスの出版社からでている"Switzerland Inside Out" という、スイスの政治からアートまでの全貌を語りつくす本の編集に関わった経験があります)、この帯ゾーンの考え方を推進するバックボーンにもなります。

この趣旨で、つまり二つのゾーンのどちらかの担当を決め、色々な方に参加していただくブログをスタートしたらどうだろうかという話しになりました。

参考までに書いておきますと、本ブログ「ヨーロッパ文化部ノート」は、今年の1月からスタートしました。現在、グーグルでもヤフーでも検索に「ヨーロッパ文化」と入れると、両者とも2百万以上のヒットがあり、「ヨーロッパ文化部ノート」はトップページに出てきます。検索で上位にあげるためのSEO対策は何もしていないので、「ヨーロッパ文化」に対する動きが日本語の世界で如何に鈍いかとの反証だとぼくは見ています。

新しい動きをしないといけないと考えています。


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