2009年1月24日土曜日
ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化
何をもって似ているとするか、同じとするか、それはコンセプトというものの理解の仕方によってきます。米国の文化人類学者のエドガー・ホールが、ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化という分類を行いました。静物画にある花瓶の背景をも含めて意味を理解するのが前者、花瓶のみを対象とするのが後者と言えるでしょう。地域でいえば中国や日本はハイコンテクスト文化に入り、ドイツやスイスはローコンテクスト文化の範疇になります。
これはアイコンなどの表現でも差異が出るもので、ハイコンテクスト文化ではリアル表現になる傾向があり、ローコンテクスト文化では、より概念的な表現になります。このような違いが実際のビジネスシーンでトラブルの種になることがありますが、八幡さんは、その例を次のように挙げてくれました。
<ここから引用>
またエピソードですが、1960年代の始め、敗戦によって日独両国の商標等は全部抹消された後で、双方がまた商標登録をやり直さなければならないことにな り、三菱商事が東京から代表団をドイツに送り、ミュンヘンの特許局で、三菱の商標登録についての審判に出席した際に、通訳として引っ張りだされた時の体験 です、
係争の相手は、ダイムラー・ベンツ。三菱の商標登録に異議を申し立てました.
三菱側は、三つの菱形と、ベンツのマークでは全く形が違うので、ベンツ側の異議は成り立たないと言う.それに対して、ベンツは、ベンツの三つの星の廻りの輪は、星を支えているものにすぎず、ベンツの商標の本体ではない.さらに、三菱の菱形のふくらみを狭めていけば、ほとんど直線になるので、ベンツの星と見間違えられる.ドイツでのベンツの別名は、『シュトゥットガルトの星』であるので、この点は譲れない.
三菱側はいたく困惑し、ベンツが日本で商標登録をした時、我々は何ら異議を唱えなかった.今回、ドイツでベンツが異議を唱えるのは不可解だと言う.
これに対し、ベンツは、それは驚くべき発言だ、我々の登録申請にあなた方が日本で異議を唱えなかったのは、あなた方のミスではないか。あなた方が東京でおかしたミスの責任を、我々がドイツで負担しなければならない理由を教えてほしい.
これには、三菱も反論できず、多分総務部のお偉方である人物は、『魚心あれば水心』と言うではないか、といったのですが、これには、ベンツ側は、あっけにとられていた、
結局、三菱は係争に負け、何年間か、三菱製品は『四菱』マークで売られていました.
これは、まさにハイコンテクスト文化とロウコンテクスト文化の出会いの実例で、前者には、商標を厳密に定義する事も、それを相手側に説得力を持って伝える論理的訓練もなかったという事をあらわしていたと想います.
<ここまで>
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