2009年4月18日土曜日

ヨーロッパ情報のモザイク感を解消する

「ヨーロッパを俯瞰するメディアがない」に八幡さんよりコメントをいただきました。

いいトピックを見つけましたね。同感です。

実際、The Economist, Interntional Herald Tribune, Financial Times くらいが、ヨーロッパ全体を見渡すには最良でしょう。それにしても、2つは、イギリス、もうひとつは、NYTの所有であるらしいが無国籍です。

L'Osservatore Romano がVatican から全世界を網羅して(ただしカトリック教会の立場から)報道していますが、あのような新聞をEUレベルで発行する事が出来ればと思いますね。それでも、この新聞の小さな記事、「教皇は、ドイツの東西境界線で分断されていた在る司教区(司教座は東独領内)の西側半分を、固有の司教区とする事を決定した」というニュースから、W. ブラン ト政権は、東独を固有の独立国として認める「東方外交」に方針を切り替えたと、当時、ドイツの雑誌で読んだ記憶があります。

全般的報道の意味をよく示している一例でしょう。

L'Osservatore Romanoはオンラインで数ヶ国語に訳されています。これは確かに一つの参考になります。ある意味、ある領域をベースとする点では各国新聞のあり方に近いといえなくはないかもしれません。

Economist などはいまでも Europe and Britain という表題でヨーロッパ関係のニュースをまとめると言う、ヨーロッパ大陸から一歩離れたスタンスをとっているあたりに、視点の独自性がありそうですし、長年の大英帝国時代以来の外交関係の経験・情報の蓄積,強力なインテリジェンス能力が、FTも含めて、イギリスのああしたメディアの背景にあります。其の点は、オッセルバトーレ・ロマーノも同じですね。

EUには、そのような政治・社会的背景構造がありませんから、全ヨーロッパをカバーするメディアの登場は、政治的な今一度の変革が必要ですし、それを各国の選挙民が許容するかどうかという、危惧もある、此れはむしろ大きくなっているのでないでしょうか。

それにしても、日本のメディアは未だに蛸壺報道ですね。

英国のメディアが圧倒的に強いのは、英語という言語の問題に留まらない背景があるということです。ローマのバチカンと同じですが、EUの中心であるブラッセル発では人々の関心を惹きつけきれない。それは、各国紙の時差ありサマリー的英語ダイジェスト版ではリアリティがもてないということにも繋がっているでしょう。

あることをなるべくホットな状態で知ることが、強い関心を抱く動機であるとすると、各国紙が如何に英語版をリアルタイムで用意していくかに関わってきます。英国のGuardian は、自国や英語国民以外をマーケットとして重視したオンライン編集をしているというし、ドイツの週刊誌Spiegel のインターナショナル版のような体制が、一文化圏に一つでもあれば、随分と違ってくるだろうと考えています。イタリアのCorriere della sera も英語と中国版があります。リアルではないしサマリーですが、ダイジェスト版につきものの「匂いのなさ」はかろうじて避けられているのではないかと思います。

そして我々としては、少なくても「リアル感」のあるヴァージョンの寄せ集めで、どうしても残るモザイク感をどう補完するか(解消するか)を考えるべきではないかとも思うのです。

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