2009年2月5日木曜日

『17歳のための世界と日本の見方』-3





七味オイルの開発ストーリーの最終回です。コラボレーションする何かを待つ姿勢でいたら、まさしく、その方向にマッチする話が向こうからやってきてくれました。それは長野から来たのです。

長野県上田市にあるギフト商品会社を経営する石森さんとのおつきあいは10年近くになります。2007年の2月、石森さんから「日本で三大七味唐辛子の一つと言われる善光寺の八幡屋礒五郎さんの七味とオリーブオイルのコラボ商品を企画してみませんか?」と提案がありました。私は、瞬時にこれは面白いと思い、アレキサンダーに伝えました。彼からも「是非、挑戦してみたい」との即答を得られました。

彼は七味唐辛子がどんなものか知っていました。そして、ミックスさせるものが日本の伝統調味料であることにも大きな魅力を感じました。早速、石森さんが試験的に作ったサンプルをテスティングし、「イタリアのペペロンチーノにはない奥深い味だ。しかも、デル・ポンテのエキストラヴァージンオイルの味と香りが十分に生きている!」とアレキサンダーは感嘆します。

ドイツと日本の哲学、イタリア文化、これらが統合され最後の刺激材料だけを待っていた状態だったのかもしれません。280年余続いてきた老舗七味唐辛子と地中海の典型的な調味料であるオリーブオイルの融合、七味オイルというコラボ商品の開発は、こうしてスタートを切りました。

石森さんとは現社長のお父様のときからお付き合いしてきましたが、今回の提案は三代目の現社長によるものでした。そして、八幡屋礒五郎の社長さんはぼくと同世代です。国文学で修士をとられた方です。世代と文化的素養がうまくミックスしています。

モンテカティーニはフィレンツェの西北にあたり車で1時間程度の街です。この街の背後に広がる山の中にアレキサンダーの邸宅と農園があります。ここに7-8人はゆったりと入れる和風露天風呂があります。洗い場もあり、和式の桶など日本から取り寄せました。アレキサンダーとファビエンが新婚旅行で日本の温泉地巡りをした思い出が、そのままあります。二人で日本のイメージを思い起こしながら、イタリアの建材を使って作りあげました。

湯の中に体を沈めると水面のはるか向こうには修道院が見えます。しかし、湯は日本を感じさせてくれます。2007年11月、八幡屋礒五郎の室賀さん、石森さん、アレキサンダー、そして私の4人で一緒にこの風呂に入りました。七味オイルのビジネスプランついて思い思いに語り合ったのですが、この和と洋の空気の調合具合が話をとてもスムーズなものにしてくれました。

「和洋折衷」という言葉は、今や若干古臭いイメージがついてまわるような気もするのですが、この七味オイルへの皆さんの反応をみていて、和洋折衷の積極的な意義をつくづく私は感じています。妥協ではなく、お互いが自分の価値をより高めながら距離を縮めあうその姿勢自身が潔く寛容であり、相手方の文化への敬意が表現されます。異なるものを全く入れないことで純粋性を保つ価値観もありますが、あえて違ったものと衝突しながら新たなものを目指す姿勢には、緊張感とスガスガ
しさが感じられます。この点に七味オイルの新鮮さが凝縮されています。

現在、この製品は八幡屋礒五郎さんのオンライン(下記)や日本国内のデパートで売られていますが、とても評判が良いです。次の製品も開発中です。このプロジェクトをみながら、やはり質の高いプロジェクトの実現には時間が必要なんだとつくづく感じています。熟成をさせる時間をどう見るか、これが文化差として地域によって異なるところです。

http://www.yawataya.co.jp/shop/product59.html

尚、写真はアレキサンダーとファビエン、結婚前の二人です。

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