2009年2月20日金曜日

プラットフォーム作りに無関心?





東大の宮田秀明さんが、日経BPでリチウム電池を例に、ものづくりの価値を拡大するビジネスの必要性を熱く語っています。興味を引くのは、この記事のアクセスランキングは今現在2位なのに、読後アンケートに「参考にならなかった」「どちらでもいい」という回答が「役に立った」より圧倒的に多いのです。聞き飽きた趣旨と受け止められたのか、危機感が薄いのか、要フォローです。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20090217/186337/?P=1&ST=spc_fl

電池と電気自動車を製造するだけでは、結局下請けになってしまうのだ。日本の製造業が全部製造下請けの立場から脱出できなければ、日本の産業の未来はない。韓国、台湾、中国という具合に第2、第3の製造下請け担当国・地域が後ろにたくさん控えているからだ。

2次電池と電気自動車を生かすビジネスモデル、つまり新しい環境エネルギー社会システムを開発し、その知財をしっかり保全していく戦略は日本に とって最も大切なものだ。日本の製造業にその力がなければ、情報システム会社や商社や電力会社との連携ビジネスも大切な選択肢であろう。こんな経済環境下 でも確実な利益を出しているのは総合商社である。

私たちの研究グループが中心になって進めている「二次電池による社会システム・イノベーション」の活動は、業界横断的なビジネスを創造し、モノ作りの価値を倍にして、日本の産業競争力を取り戻す道を探求するためのプラットフォーム作りの活動とも言える。

モノ作り回帰の論調に同意してはいけない。それ自身は大変価値のあることだが、モノ作りの価値を拡張するビジネスにも力を注がなければ、日本の産業全体の空洞化が進むことになるだろう。

一方、やや前の記事ですが、元NTTドコモの夏野剛氏のダボスでの感想は、この宮田さんの焦燥感を裏付けるものではないかと思います。10年先のあり方を「一人の頭で考える」ということができないと、プラットフォーム作りは敷居が高すぎます。やはり、ヨーロッパ文化部のやるべきことの一つは、「プラットフォームを作る」という目的のために、文化理解のベースを確保することなのでしょう。

http://it.nikkei.co.jp/business/column/natsuno.aspx?n=MMIT33000012022009&cp=2

もっとも、もし日本の経営者がこの場にいても同じレベルで議論できる人はごく少数であろう。言語の問題もある が、そもそも日本のITや通信業界のトップは10年後のインターネットのエコシステムなんて、自分の頭で考えたことがあるのだろうか。原稿なしで議論でき るのだろうか。

え、10年後なんて自分の任期ではない?でも、会社の方向性を決めるうえで意識しなければいけないテーマであることは間違いないと思うけれど・・・。

なにしろ、他のメンバーと比べた自分の存在の小ささに日本自体のプレゼンスのなさが追い討ちをかけて、本当に落ち込んだセッションだった。

ともかく世界のリーダーたちはよく議論する。自分が専門知識を持っていなくとも、正しいと思うことは遠慮なく発言する。議論によって、いろいろな考え方を知り、それによって自分の意見をさらにブラッシュアップしていく。

そして主語で語る。「私はこう思う」「私のポリシーは…」という言葉が溢れている。


2 件のコメント:

  1. ISOなど国際標準化会議では毎度この種の慨嘆が出ます。
    経営者の時間軸上の視線如何よりも、日本の文化的状況でしょう。お釈迦様の手のひらは与えられるもの、その上で上手に踊ることに専念するのが先輩達でした。会議の出席者達はその手のひらを自ら作ろうとしています。その努力や独創への評価には彼我の差がまだ大きい。それは日本国内では企業間の踊りの競争を第一としているに対し、それを見ている欧州では手のひらをどうするかから検討します。かつてのVHSとベータではかろうじてフォーマット競争となり、欧州の戦略から逃れられたと認識します。このストラテジへの評価の土壌は成功例の積み重ね、つまり文化レベルに到達するしかないでしょう。簡単ではありませんが、現場諸氏のご尽力で確実のその方向にはあります。必要なのは応援です。

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  2. コメントありがとうございます。

    関与されているISOのワーキンググループなりでは、光明が見えているということですね。それは良かったです。必要なのは、「手のひらを作る独創性」を評価する土壌を作ることですね。応援しましょう。

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